3年間 大阪市の下のほうにある街に住んでいた
大物政治家が息をはいた職場で 少しかどうかわかんないけど賃貸の保証人にも
なってもらい 敷金礼金も払わずに 住居と職を得て過ごした
4月入職まであと少しのぎりぎりのタイミングで決めた物件は
大きさと職場の近さで選んだ 築25年のマンションで大家さんがいた
月6万円 2K 何とかギリギリお風呂とトイレは離れていて
洗濯機置き場はベランダだった
地下鉄を出ると
大きな公園が近くにあって
コンビニもたくさんあった
日曜になると青空市がやってたり
かわいい雑貨がたくさん売っている店も多かった
安い総菜と嫌いになれない 慣れ慣れしい店員さん
温泉 サウナが400円で
10個入り250円のたこ焼き屋
一人暮らし
時間の感覚がマヒする 昼夜の交代勤務
24時間光っているスーパー
半額になる総菜や刺身を片手にぶら下げて帰った
ペット禁止の部屋で2匹の友人を迎えた
深夜に食べる ニンニクとにらの入ったラーメン
肉のにおいと煙
お酒と香水の匂い
大声で会話するサラリーマン
空き缶やたばこは道に捨てられる
たこ焼き屋の隣にある薬局は 不妊症に効く漢方や腰痛に効果があるサプリメントを
法外な値段で売り付けていた
1年づつ3回 盗まれた自転車 ちゃんとロックもかけて チェーンもかけてた
置き忘れた財布も 簡単にやられる
何度も何度も重箱の隅をつつくような先輩
たばこのにおいをぷんぷんさせて いいことを言う上司
刺青の入ったお客や
何度も呼びつけるお客
いきつけの居酒屋さんを営んでいるマスターが亡くなった
誰もいない 病院のディルームで倒れていたという
失意のうちに帰る深夜 大きなカッターナイフを持った男に襲われた
短いスカートを履いていたからだ、と彼は言った
これ見て と見せてもらった運転免許所は韓国名だった同僚
あたしは このままでええねん と進学を断った彼女は親の借金で住民票を
持たなかった
友人を迎えるにあたり口酸っぱくして 注意点を教えてくれた年配の同僚
下の名前をちゃん付で呼んでくれた 彼女にもらったポーチ 今も使っている
朝 懐かしいにおいがする その場所を歩いた
家賃は4万円に値を下げて 更に年期が増し、風格を漂わせていた
大家さんの名前はなくなり 代わりに大手賃貸会社の連絡先が書かれた
プレートが張ってあった
職場は移転していた
落ちたたばこと空き缶をかたずける商店街の人々を見た
相変わらず400円のモーニングセットを展開している喫茶店があった
桜が咲いた 無言でカメラに収めた
その姿を見た 年配の女性と目が合った
「あらっ咲いてるやん 下向いとったら、ほんまきれいに咲いとる 教えてもうてあり
がとうなぁ」満開の笑みでと言われた
笑いあった 泣きあった 抱きしめ合った 一生懸命だった
大切な何かを渡してくれた人々
今日も 全力で生きる